2016年、広島県福山の「神勝寺 禅と庭のミュージアム」内に新たにつくられた、彫刻家・名和晃平氏とSANDWICHの設計によるアートパビリオン《洸庭(こうてい)》。その内部には、WOWと名和晃平のコラボレーションによるインスタレーション作品が広がる。

「小さな入り口から舟のなかへ入ると、暗がりに広がる海原に出会う。その表面は静かに波立ち、静寂と闇のなか「波」に反射する「光」と対峙することで思索の時間を過ごすことができる。不思議なことに波間にたゆたう光をじっと眺めていると、視覚だけでなく聴覚までもが研ぎ澄まされる。現代人はさまざまな映像メディアによって、毎日のように情報のシャワーを浴び続けている。商業エリアに溢れる光や映像は短時間で大勢に情報を伝え、消費者の欲望を掻き立てることに特化したものが多いが、そういうものから離れた静かな知覚体験が、ダイレクトにその人の感性に響くことがある。もちろん、瞑想のための時間/空間とはいえ、拝観者それぞれの感じ方、受け止め方があるだろう。プランニングの段階から、「禅」をそのまま表現するつもりはなかったが、その場に訪れたことが記憶に残り、現代における禅的な感性、哲学とは何かということをふと考えるきっかけになるなら、それに越したことはない。」
(名和晃平「山あいに浮かぶ舟のような建築」、『新建築』2016年12月号、pp.74-85、新建築社記事より)

映像は「波」によって「光」に還元される。映像の解像度の進化は留まる事なく進歩し、8K、16Kとこの先も進んでいくだろう。しかしこの作品においては、どんなに高解像度な映像であっても「光」に還元され、未来においても作品性は全く移ろう事なく、存在し続けるだろう。映像という移ろいやすいメディウムが、「光」にまで還元されて初めて、現象の再現性、物語性、そして永続性を持ち得えた。これは映像表現の本質的変革であり、変革は瞑想の苗床である静寂と闇の中から生まれた。
(田崎佑樹|WOWコンセプター)




 

Credits

WOW
Conceptor: Yuki Tazaki
Creative Director: Takuma Nakazi
Programmer: Tomohiro Nagasaki, Shunsaku Ishinabe
Sound Engineer: Hikari Mutaguchi (White Light)

KOHTEI Project Members:
Planning: Shinshoji temple and Kohei Nawa | SANDWICH
Project management: Toshiko Ferrier of Office Ferrier
Installation: Kohei Nawa | SANDWICH with WOW
Sound: Marihiko Hara
Cooperation: NICCON and SUPER FACTORY