人類史上初めて、「地球外生命体」の存在が現実のものとなる日が近付いている。いま、NASAをはじめとする最先端宇宙研究のもとで、木星や土星の衛星付近に「生命の誕生する条件」を充分に満たした環境が発見されているのだ。

現在、NASAエイムズ研究センターを拠点とする宇宙生物学者・藤島皓介(東京工業大学 ELSI/地球生命研究所)らとのコラボレーションによって生まれた本作は、土星の衛星エンセラダスへ探査機を打ち上げる計画の実現に向けたプレゼンテーション・ムービーだ。それはまた、氷に覆われたエンセラダスの地表には、内部の熱水によって発生したプリューム(間欠泉)が宇宙空間へと噴き出しているが、近年の探査機カッシーニの調査によれば、そのプリュームは塩分を含み、地球にあるアルカリ性の海水と近い要素を持っているのだという。藤島らが進める計画は、この海水サンプルを回収して分析し、生命の源をつくるタンパク質「ペプチド」の存在を明らかにすることだ。この計画は、現在2020年代にNASAが採択する7つのミッションの有力候補に上がっており、いよいよ現実味を帯び始めてきている。

本作は、研究者が総動員で実現へと挑むプロジェクトを社会にアピールするだけでなく、「生命」という不可思議なものの本質に迫ることで、“動き”の表現の追求から「Anima(霊魂)」の存在を浮かび上がらせようとするWOWのアートコンセプトにも呼応するものでもある。




そしてまた、人類が初めて新しい「生命」の存在を知るという、宇宙と生命の歴史をめぐる壮大な物語の幕開けを示した序章的作品となっている。

(TEXT BY ARINA TSUKADA / Curator)

関連リンク:宇宙生物学からALife(人工生命)まで、「生命の起源」を探る実践
http://boundbaw.com/world-topics/articles/8

 

Credits

WOW
Conceptor: Yuki Tazaki
Director:Tyler Bowers
3D Artists:Takuma Sasaki, Kenji Tanaka, Yusuke Mizuno
Sound Design:Tomohiro Nagasaki
ELSI Scientific Supervisor:Kosuke Fujishima
Curator:Arina Tsukada